家具業界のゲームチェンジャーを目指す

株式会社アダル 代表取締役社長 武野 龍 氏

創業70年となる老舗の業務用家具製造卸販売会社の株式会社アダル様。
福岡県内に工場を持ち、家具の受注から制作・納品までを行う注文家具製作に強みのある企業です。
特に製造現場では昔ながらのやり方が多く残っていた中、福岡市が実施した中小企業のDXを後押しするための補助事業に申請し社内のDX促進に取り組まれています。
単なるデジタル化にとどまらないその先の展望を代表取締役社長の武野様にお話いただきました。

--本日は、よろしくお願いします。まずは御社の業務内容を教えていただけますか。

業務用家具の製造と販売になります。
ホテルやレストラン、商業施設などで使用される家具の製造卸販売を行っています。

《アダル様が製造・販売されている家具の一例》

--令和4年度の福岡市DX促進モデル事業に申請をされたきっかけは?

製造現場ではいまだに紙のやり取りが多いんです。しかもうちの工場は、同じものを何度も作るいわゆるライン工場ではなくフルオーダーの仕事が多いので、標準原価がつかみづらいという問題を抱えていました。
オンタイムでの数値管理もできておらず、長い間DXの必要性を感じていました。
ただDXはあまりにも事例が多く、自社に当てはめた場合費用感なども参考にならずなかなか踏み出せない状況でした。そんな中補助事業の話を聞き申し込みをしました。

--デジタル化に対する抵抗はありましたか?

現場から見るとそもそもの工程に反復性が無いので、デジタル化の意味が無いと思われていました。
しかしながら社長が私に代替わりして10年ほど経ち、私自身がデジタル技術をずっと使っていたのもありいつかデジタル化されるという雰囲気は社員も感じていたように思います。
15年前だったら難しかったと思いますが、今はみんなスマホを使っていますし自然とデジタル化が進めやすい環境なのかなと思います。
思いのほか反対障壁は大きくなかったですね。

--DXに取り組まれて社内は変わりましたか?

これまでは工程ごとの標準原価や進捗が把握できておらず、評価に繋がるデータが取れていませんでした。
そこはずっと社内でも不満が出ているところでした。

デジタル化を進めた結果、以前は月ごとでしかわからなかった生産高が日ごとの生産としてわかるようになりました。
それをグラフ化して社員に見せるとやっぱり歓声があがるんですよね。
デジタル化することで評価につながりますし、自分のやったことが見えるというのは社員も楽しみにしていると感じます。

社員から「社長はデジタルや新しもの好き」と思われているのが不満なんですけどね。(笑)
ただそういったイメージって実は大切だと思います。何もわかってない人が「デジタル化しよう!」と言っても説得力は無いですよね。
実は昨年度から手帳を使わずiPadに置き換えたんですが、これは「紙を持たない」という社内に対するアピールでもあるんです。

本当のところは手帳に手書きしたいんですけどね。(笑)

《アダル様の家具が納品されたホテル》

--先ほど標準原価のお話がありましたが、基準となる標準原価というのは元からあったのでしょうか?

既製品にはもちろんありました。ただ特注品となると、製造に要する材料費や加工費、時間をカンに頼って出していました。
この世界ではカンもすごく大事ではあるんですが、カンに基づいて作られた結果の検証ができていませんでした。
ここがDXで明らかにしたかった部分ですね。
人間の「カンピューター」をいかに標準化していくかが大事だと思っていますが、そのためには数字が見えていないといけませんよね?

乱暴な言い方になりますが、「まずはデータを放り込むこと」。これがDXのまず一歩目だと思います。

--今後の展望をお聞かせください。

DX化により、本当に人間が関わらなければならない業務に注力したいと考えています。
例えばになりますが、注文したものの製造の進捗具合や写真がお客様の方で見ることができるようになるなど、新たな付加価値となるサービスが提供できるようになりたいですね。
お客様も日々進化していますし、お客様が本当に期待するサービスを提供したいと思っています。

今回私たちがDXに取り組む中で構築したシステムはできる範囲でオープンにしたいと考えているので、小規模事業者がそれをトレースする形でDXに取り組んでもらえたら嬉しいです。
この業界ではいまだに紙の見積書でやり取りするなど商習慣が邪魔をしている部分があるのですが、そんな古い商習慣にも馴染むDXをおこない、この業界のゲームチェンジャーになれたら最高ですね。

株式会社アダル
https://www.adal.co.jp/