業務の可視化でスタッフの意識を変える

行政書士法人小金丸 代表 小金丸 さん
          DX推進リーダー 岩田 さん
代表 小金丸さん 
DX推進リーダー 岩田さん
--本日は、よろしくお願いします。まずは御社の業務内容を、教えていただけますか。

我々の事務所は運輸支局の隣の建物に位置しておりまして、自動車の登録・車庫証明等の手続きを代行しています。福岡市内のほか、福岡県内外のカーディーラーさんや行政書士さんからもご依頼をいただいています。おもに、警察署と運輸支局へ、それぞれ車庫証明と自動車登録の申請の代行を行い、出来上がった車検証やナンバープレートを、お客様のもとへお届けすることが、私たちの仕事です。

--令和3年度の福岡市DX促進モデル事業に申請をされたのはどういった動機があったのでしょうか?

私がちょうと3年前にこちらの事務所に移転してきたのですが、それまでここは別の所長さんが運営されている30年続く事務所でした。
私が来た時は自動車登録用業務専用ソフトが入っている端末が2台と、車庫証明に必要な見取り図を印刷する機械が1台あったのですが、従業員10人は全て手書きで作業しており、外部とのやり取りは全てFAXで行っていました。

外出先から戻ると、「○○さんに連絡してください」書かれたふせんがPCにペタペタ貼ってあるという状況でした。そういった状況を改善すべく、外回りの者にはスマートフォン、内勤者にはノートPCを配布し、情報の共有をリアルタイムで行うようにしました。
紙文化を減らしデジタル化することで誰がどのような業務を行ったかを記録することを目指していたところ、福岡市が中小企業のDX化の後押しをする補助事業を行うという情報を見つけて応募しました。

補助事業を行う中で、今までのやり方をなぜ変える必要があるのかとの従業員の抵抗もあり、初めの頃はこれまでのやり方を大幅に変えないようにしました。
従業員に納得感がないままやり方を変えようとすると、やはり反発もありました。ただ、1年ほど経ったころ、デジタル化できていな事で、管理者が業務を把握できていないと言う課題がわかってきました。情報の共有化ができておらず、管理者がどのような指示を出しているかが見えないことで、組織としてきちんと回っていないと感じていました。

そこでまずは報連相の仕組みを整え、指示命令をチャットで行うようにしました。
また、外回りの者に預かった書類の件数をデータ登録させ、ほかの従業員とリアルタイムで共有する事で業務量の把握ができるようになりました。
当初は反発もありましたが、実際にやってみると退社時間が早くなるなど生産性の向上が実感できました。

--単なるデジタル化ではなく、仕事のやり方も変えていったということでしょうか。
小金丸さん

そうですね。ツールとしてデジタルを使用しているといったところです。
現場のテコ入れに関しては、岩田君に「なんでできないの?」と毎日言うようにしていました。(笑)
kintone(クラウド型業務改善プラットフォーム)でデータ入力できるようにフォームを変更したのですが、実装するために必要な検証になかなか協力してもらえませんでした。検証をやる意義を理解してもらうのがとても難しかったです。

岩田さん

これまで書類を早く書ける事に価値があると考えていたのに、「なぜいきなりデジタルなんだ」と抵抗がありました。しかし所長が毎日のようにデジタル化する事のメリットを説明することで、「やった方がいいよね」という雰囲気になり徐々にDX化に取り組めるようになってきました。

--仕事のやり方を変えるにあたって、はじめに日報のようなものを作られたのでしょうか?

今は外回りの人は何時にどこに行ったという報告は出しているが、形式的なものでしかないと思っていますので、
今後はドライブレコーダーを活用し、自動的に日報が出せる仕組みを導入しようと検討しています。
ただ内勤の人はそのような報告をまったくしておらず、全体的に仕事を前向きにするということがあまり感じられませんでした。
今は誰が何回電話を受けたかも把握できているので、頑張ったことは積極的に評価していきたいです。

--岩田さんがDXを広める伝道師であると認識していますが、広めるに当たって心がけていることは何でしょうか?
岩田さん

やりたいと思うようなビジョンを掲げて、他のスタッフに「いいな」と思ってもらう事が大事だと思います。
経理のシステムの検証が後回しとなっていたのですが、検証をすることで省力化が可能になり、属人化を防ぎミスもなくなることを根気よく伝えるようにしました。今は率先してやってもらえています。

小金丸さん

これまでは経理の方の残業が非常に多かったんです。そこで、現在の業務を洗い出してみたら経理担当者以外ができる業務も結構あることがわかりました。それを周りのスタッフに振り分けたことで、検証をやってみようと思ってくれたんだと思います。業務の可視化はとても大事だと思います。

--今後は自社のDXがどのように進んでいくと思われていますか?
岩田さん

今は我々の方で入力している情報も、ゆくゆくはお客さん自身で入力いただけるようになったら良いと思っています。そのことで我々はチェックに回れるようになりますので、お客さんが側にアドバイスができるようになり、それが価値を生むのではと考えています。仕事の仕方自体もシフトしていくと思います。

小金丸さん

国交省へ提出する書類の中には、行書書士しか作成してはいけないと行政書士法で決められているものもあり、法律で仕事が守られている部分も確かにあります。ただ、そのような法律がいつまでもあるとは考えていません。
今は人間がやっている業務をデジタル化し、書類をいかにスムーズに提出できるかということに我々行政書士は挑戦していくべきだと思っています。
一緒に開発に取り組んでくれる企業があれば、ぜひ投資していきたいと思います。

--One Kyushu DXや外部の機関に求めているものはありますか?

とにかく応援していただきたいと思っています。(笑)
具体的には人を派遣してもらったり、アドバイスを受けたいです!
システムを導入する際に、ネットで検索してみてもどれが良いかわからないため、
One Kyushu DXや福岡DXコミュニティなどの詳しいメンバー方に教えていただけるとありがたいです。
また、開発をお願いする上でどのようにコミュニケーションをとるのかわからないところもありますので、色々と勉強させていただけたらと思います。
これからもよろしくお願いいたします!

行政書士法人小金丸
https://www.whoin.jp/