データのプラットフォームで業界の常識を変える

森山工業株式会社 代表取締役社長 森山 さん
--本日は、よろしくお願いします。まずは御社の業務内容を、教えていただけますか。

弊社は大正15年創業の、工場生産するコンクリート製品用型枠の専門メーカーです。人の目に触れない裏方の商品なので、説明してもピンとこない人が多いです。

積みブロック製品
(型枠を使用して作成されたコンクリート製品)
実際の積みブロック施工例

逆の形を立体化し、3DCAD、レーザー加工機、マシニングセンタ、溶接を駆使して、高精度できれいな仕上がりと、振動等の過酷な使用条件に耐えうる強度を保持し、お客様の要望に応える物作りを実現しています。

積みブロック製品の型枠(森山工業の商品)
積みブロック製品の型枠を開いたところ
--DXへの取り組みについて教えてください。

自社内だけでなく、お客様の型枠を有効活用できるようなデータベースを構築しようとしています。本データベースには、お客様が保有する他社の型枠データまで含んで、業界としてのプラットフォームを作り上げたいと思っています。
今までは、一点々オーダーメードでご注文、製造販売のビジネスモデルでやってきましたが、大量生産・大量消費の時代ではなく、利益を出すのが困難になっています。結果、納期が長く、お客様を待たせてしまい、お客様のビジネスに役立てていないと感じています。
どうすればよいか考えた結果、お客様が保有している型枠をもっと有効活用できるようなデータベースを作ろうと思い立ったわけです。

--いつ頃からデータのプラットフォームを考えたのでしょうか。

 4年ほど前からずっと考えておりました。データベース自作に辿り着くまでには、外注したり、色々と試行錯誤しました。
お客様の多くは、保有する型枠を把握・維持管理する事がとても困難で、活用出来ていないのではと考えました。
お客様の持つ型枠を有効に活用し、納期と価格、品質を向上させて、お客様の利益向上に役立つ事が、社会にとっても、コンクリート製品業界にとっても、弊社にとっても重要な事だと考えました。

--業界を盛り上げたいという想いが詰まったプラットフォームなんですね。

 綺麗事に聞こえるかもしれませんが、近年、毎年災害が発生し甚大な被害が発生しています。データを整理して必要な型枠を用意し、コンクリート製品を迅速に提供する事で、災害に見舞われて困っている所に素早く対応できると良いと思います。
また、無駄な型枠材料を抑えることで、SDGs 的な 取り組みも実現したいと考えています。目標として、消費する型枠材料を10年後までに半減する事を掲げています。データベース化されたお客様の型枠をリユースする事で、環境負荷の軽減に役立ちたいです。

作成中のデータプラットフォーム
--プラットフォームを作る際にお困りの点はありますでしょうか。

 このデータベースの目的を理解してもらえる事でしょうか。型枠の管理自体から始めなくてはならない事も大きな壁になると思います。長年、蓄積されたものを整理整頓する事、人によって異なるやり方を合わせる事等、すごく難しいです。システムを取り入れても、現場の理解が足りずになかなか前に進まない事も想像してしまいます。
しかし、今まで図面データ&紙媒体と、写真&画像を人力で紐づけていましたが、クラウドを利用したデータベースに情報をまとめ、外出先でも閲覧・確認が出来ると、お客様にとってもプラスになると思います。
まだ先の話ですが、3Dスキャナ等を活用してモノを360 度見る事が出来たりすると面白いですよね。あとは、お客様が必要とするデータの選択や、品質基準を決める事も大事なので、やることは多いですね。

--話は変わりますが、現場の方がDXを理解する上でどこから手をつけたら良いでしょうか。

まず整理整頓ですね。いらないものは捨てて、必要なものだけ残して並べ、使ったら元の位置に戻す。この必要性は皆さん感じていらっしゃいますし、現場の方は特にそうしたいと思っていると思います。次のステップとしては、せっかく整理整頓したんだから、それに番号をつけて住所化します。
データベース化する事は、モノの整理整頓をデジタル化し、情報共有する方法の一つなので、同じことだと思います。地道に実行し、無駄な時間を省いて、より付加価値を上げていく事ができると思うんですよね。
それと以前、弊社で3DCADを導入する際に、すごく抵抗があって、年間の維持費が結構かかるので、「なんとかせんといかん」という思いがあって自分で勉強して社内講習会を開いた事もありました。そういう事を繰り返していくうちに、メンバーも発奮し、主体的に取り組む社員も出てきて、実戦で使える環境にまで持ってきてくれました。
振り返ると「あれがわからん。これができない」等とできない理由で惑わされてしまって、理解していないと仕方ないと思ってしまうんですよ。だから「こうすればいいんじゃない?」と話せれば、進めていけますよね。限度はありますが、旗振りをする人がちょっとでも学ぶと強いと思います。

整理整頓(1):工場現場の様子
整理整頓(2):社員の引き出しの中
--最後に、読んでいる皆様へメッセージはありますでしょうか。

 私自身、プログラミングをやったことがなく、エクセルでマクロを作る位でした。しかも社内に私一人で始めた事で、学ぶにあたって障壁は高く、知らない専門用語だらけで、まだまだ勉強中ですが、やってよかったと思います。次第に社内で話が出来る人が増えつつある事も、嬉しい実感ですね。
かなりの努力は必要で、難しいですが、地道に身に着けていくしか方法はありません。でも、間違いなく強みになると信じています。

 One Kyushu DX は、1 人や社内数人で悩んでいる人からすると色々と相談しやすい場だなと思います。他の会社さんやうちでもそうやって悩んでいる人がいると思うので、ぜひ様々な人にこのコミュニティに来てもらいたいですね。今後もぜひ色々と相談させてください。

森山工業株式会社
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