現場に優しいDX

株式会社オートシステム システム部 チームリーダー 熊本 さん

2018年に経済産業省の地域未来牽引企業にも選ばれた、株式会社オートシステム。今回は、福岡市西区の本社工場で、10年以上前からDXを推進している熊本さんにインタビューを実施。DXの取り組みや課題など現場を変えるために変革を続ける熊本さんのリアルな声を聞いてきました。

--本日は、よろしくお願いします。まずは御社の業務内容を、教えていただけますか。

弊社は、1984年に創業した総合メーカーで、主力製品はワイヤーハーネスになります。それ以外にもレントゲン撮影台といった医療機器や自動機器といった装置事業も行っております。弊社が得意としていますのが、大手電機メーカー様の実装機や免疫検査装置などです。基板に高速でチップを載せるチップマウンターという機械に組み込むケーブルを弊社が生産しております。

--DXへの取り組みは、いつ頃から行われていたのですか。

10年以上前の2011年から他社に先駆けて製造工程の見える化に取り組んでおります。今までは、大量の紙の図面を毎回コピーして作業者さんにお配りしてその図面を見ながらモノづくりをしていたのですが、工程の全てにタッチパネル式のパソコンを設置しまして、独自開発の生産工程管理システムに表示される図面を見ながらモノづくりをすることでペーパーレスやトレーサビリティを実現しました。
2014年には調達DXとしてWMS(*1)を利用してVMI管理(*2)の導入をしました。その他にも製造現場向けには小型無線バーコードと耳掛けイヤホンを使った材料チェックシステム、キューブ型のIoT機器とリストバンド間通信による現場情報通知システムを導入しております。2018年には物流DXや環境負荷の低減を目的として、海外工場からお客様へ繋がる物流の過程に、RFIDを貼付した独自設計の10面体プラ段を通い箱として利用することで、RFIDによる一括出納管理や循環型物流を実現しております。最近では、複数のケーブルを束ねる”ハーネス化”という工程にプロジェクションマッピングを導入し、教育コスト、作業工数削減の検証を行っております。

(*1)WMS:Warehouse Management System、物流倉庫内の一連の作業を支援するシステムで所謂「倉庫管理システム」

(*2)VMI管理:Vendor Managed Inventory、ベンダーによる在庫管理で、部品の供給ベンダーが顧客の在庫を管理する「富山の置き薬」のような仕組み

--様々なDXを推進しているんですね。作業を行う人に抵抗はなかったのですか。

タッチパネル式パソコンはスマホと同じような操作性を意識して開発したので、パソコンが苦手な作業者さんもなんなく使うことができました。いろいろな情報が入っておりますので、部材の写真や手順書をスマホを触っている感覚で見ることができます。材料の間違いを音で教えてくれる耳掛けイヤホンも、耳の穴を塞ぐものでは環境音が聞こえずぶつかったり、長時間つけておくのは辛いという声から、耳掛け式のオープンイヤーを採用することで使ってもらっています。

--作業者の皆さんが新しいことに前向きに取り組む姿勢はどうやって作ったのですか。

一つは楽に便利になるというメリットがあるとしっかりお伝えすることですね。自分にとってのメリットを認識することで、「ちょっと1回やってみようかな」みたいな感じの雰囲気で前向きに取り組んでいただけるので、非常にありがたいですね。もうひとつは、ヘルプデスク案件が発生した時に、すぐ現場に出て作業者さんに対して対応したり、その他のお困りごとがないかをそこで聞くようにしています。そうすることで、感謝されつつ信頼ももらいつつ、すぐに解決できないお困りごとは持って帰って、それをシステム部内で議論し、解決することで新たな改善につながったりと、現場との信頼関係を築けてきたということが大きなポイントかもしれません。割と普段からいろいろな取り組みをやっていることもあって、「またシステム部がなんか面白いことやりよう」という感じで思ってくれてたらいいですね。

--DXを取り組みにあたっての課題があれば教えてください。

“人”の問題が一番かなと思います。元々社内では私が1人で、他部署の協力を得つつ、営業や調達業務を兼務しながら、DXを進めていたのですが、現在は社内の別部署から2名と新卒採用の1名を加えて、4名のシステムチームでDXを推進しています。ですがやはりもっと人が欲しいですね。実は私も含めて全員がIT分野の出身ではありません。なので専門的な部分により入っていくとなると、その辺の知見のある方がどうしても必要になってくるという意味では、なかなか社内でそういったことができる方とかはすぐには出てこないなとも思っております・・

ですので、今はこの”人”の問題を改善するために、ノーコード開発ツールの導入などを行い、社内からもDX人材を生み出せるように、現場の方が自分達で業務改善アプリを作れるような環境を整えたりもしています。実際にプログラミング経験のない工場長や作業者さんなどが、アプリを作成して利用していたり、徐々に効果が出始めているなと感じています。

その他には弊社や製造業そのものが、鎖国的であったり閉鎖的な感じが強いのも課題かもしれません。その会社の中ではしっかりやれているけど、他社を交えた水平展開をやろうと思ったら、企業秘密ということで守りがちだと思うんですよ。そこに横の協力ができるような仕組みがあればいいのかなと思います。他の製造業の現場に行って意見の交換や場合によってはコンサルのような感じになるかもしれませんが、会社や業種の壁を越えてのやり方も今の時代はありだと思います。

--最後に、DXに取り組む人たちに一言お願いします。

弊社もこれぞ”DX”と呼べるような取り組みはまだまだ出来ていないと思っておりますので、何かを言えるような立場ではないのですが、大きな会社でなくともDXを実現するためには、One Kyushu DXのようなコミュニティを活用して、全然違う業種の方とコラボして何か面白いことをやるみたいなことが生まれるのが近道なのかなと思います。今までは、我々も社内に引きこもってまして、なかなか外に出ていく人もいなくて、出てみると色々な会社さんがあるなということとか、気づけなかったアイデアやアドバイスも沢山いただけます。あとは情熱をもった方が本当に多いので、自分ももっとやってみたい!という気持ちになります。本日お見せした AMR(*3)なんかも、先日開催された座談会の時にたまたま同じグループの方と話して、検証が実現したような偶然などもありますので、広くアンテナを張るためには外に出るべきだなとまさに実感していいます!

(*3)AMR:Autonomous Mobile Robot(自律走行搬送ロボット)、搬送作業を人の代わりに行うロボット

株式会社オートシステム
http://www.auto-system.co.jp/